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ここに @itaws_ が日記や小説を公開している。 2022年年末〜2023年3月までここに書いてきた日記などをまとめた著述集『ロビン』 同時期に書いていた短編小説をまとめた小説集『きらきら大切商店街』 を文学フリーマーケット東京36で頒布。 2023年5月〜2023年…

それが何を意味するか考えたりする

さいきんは基本的におだやかですが仕事でも私生活でもちょっとしたきっかけで揺れたりぶれたりしてしまうからあやうい。ベンジャミン・フランクリンもにっこりの勤勉の精神で暮らしていきたいと思っております。ここ数日でとても暖かくなってきて私もエアコ…

何か正しく言えた方が(池谷和浩『フルトラッキング・プリンセサイザ』)

私が賞をとってまもないころに、「これからは趣味で小説を書いていくんですか」と言われて私は腹が立った。むしろ賞をとったのならば一般的に言って創作が仕事になる可能性が大きくふくらむのだから、このせりふは文脈を説明しないとあべこべな言葉になって…

大合唱

なんでおれはこんなによく晴れた土曜日に向井秀徳みたいな渋い顔のがきを隣に乗せてドライブしているんだろう。こいつはつむらという名前らしく姪の同級生だ。かわいい姪の頼みならおれは、姪の同級生という以外になにも縁のない中学生男子のこころを開くた…

四十のメソポタミア

さいきんいろいろと勉強することが楽しい。まあ、勉強することも仕事の一部のようなものだから、楽しくなくてもしなくてはいけません。 『キリスト教でたどるアメリカ史』(森本あんり)という本を再読していたのだが面白い一節があった。アメリカという国の…

スーパーまかせて発券パラダイスギャラクシー

昼食のときに同僚とエスカレーターの話をした。それは人生のたとえだ。揶揄のように使われることもあるが、エスカレーターに乗っているように見えても実は険しい傾斜を歩いて登っていたのかもしれない。私はエスカレーター的な人生だっただろうか。それとも…

日記でございみし

前回の日記は1月12日に書かれたもので1月3日から12日までを書こうと思っていたのですが、8日の朝のことまでを書いて力が尽きました。今回は8日の朝以降の出来事から今日の日付(1月29日)あたりまでをボブスレーのように一気に。 特に書くことな…

冬の花火

私は文字だけでその向こうの人間を好きになってしまうほうだと思う。ひごろ文字だけで接している、センスがよくて「素敵なひとたち」は、その、言葉の選び方や並べ方、そこから自分に向かってしっとりと映し出されてくる思想や情感といった、まだ名付けられ…

むきーっと暴れてぎゃーっと泣いてしまいそうな日記

1月3日 (水) 昼間、「オレもこういうことやりて~」とか呟きながらNHKの「俳句甲子園」の特集を、お雑煮にモチのかわりにうどんを入れたものを食べながら観る。まるですでに大学3年生のように顔が落ち着いている(顔が落ち着いているって伝わらんか)高…

凍ったものをどうするか

春、山の上に引っ越してきて新しい同僚のかたがたと音楽の話をしているときによく羊文学の名前が挙がった。春はまったく羊文学を聴いていなくて、そのとき仲間内で人気が高かったのは「光るとき」という曲だったが、頭に曲名を登録するだけでまったく関心が…

まえがきはあとがき

ここさいきんの日記(の多くはすでに現在非公開にしてしまったが)で何度か「金木犀の夜」という歌の話を書いていた。過去の日付のなかで、どんなふうに好きかそのうち書きたいと言っていて、町の金木犀もおそらくほとんど散ってしまったし、それを書いて、…

まるで泣いてるのと同じ

音楽を聴きながら日記を書こうと思ってSpotifyを開いたら「あの夏」という噴飯物のタイトルを冠したプレイリストが出てきて、しかもそこには一曲も登録されていないという点が面白いところだ。そういう日常の出来事が架空の話の種になったりする。誰かが「あ…

天文学的七月

とある人が「人間って学生時代にできなかったことに執着するらしいよ」と言っていた、それをまた別の人に伝えるとき私は「人間って二十代のころできなかったことに執着するらしいよ」と自分で内容を拡大して言っていてなんだかおもしろかった、できなかった…

学年はないけど春

ブログを始めたのは届けるためだった。提出するため。太田靖久さんの『ののの』の感想が夏休みの宿題のようで、わかしょ文庫さんの『うろん紀行』が冬休みの宿題のようで、友田とんさんの『『百年の孤独』を代わりに読む』の感想が春休みの宿題のようだった…

あの補習くらいのlabor (2023年1月)

私が生活費を得るためにしている仕事は起きる時間や家に帰る時間が毎日ばらばらで、金曜日はいつも早い時間にお酒を飲みに行き、お店に人が集まるころにはお会計をし、週末の浮足立ってくる街をあとにする。でも今日はたまたま家にいるので店に行くかわりに…

館の犬

小説作品である。

『代わりに読む人0 創刊準備号』の感想

私は文芸誌がけっこう好きだ。大学院生が使う研究棟に、サロンというか「図書室」みたいなところがあって、ここに98年から03年くらいの『文學界』や『新潮』がずらりと並んでいた。私は勉強に疲れると、ここに置かれたソファに身を沈めて雑誌をめくったもの…

荒地と宝石

「ODD ZINE」に参加した人たちの来歴や太田さんの文筆活動を追っていくうち、私は『代わりに読む人』という出版社(そして文芸誌の名前でもある)を知った。そこの第一刊行物が「ODD ZINE」にも寄稿していたわかしょ文庫さんの『うろん紀行』だ。私は『代わ…

2022年の振り返り〜「ODD ZINE vol. 9」「ODD ZINE vol. 7」「ODD ZINE vol. 3」太田靖久『ののの』太田靖久・友田とん『ふたりのアフタースクール』

2022年をふりかえるに、5月か6月ごろに原稿依頼を受けたことが大きかったと思う。新しい文芸誌が創刊されるということで、はじめは短い小説かエッセイでも、というトーンだったが、話を聞いているうちに分量や内容はある程度自由にやってもいいのかもしれな…